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ペアローンは本当に得なのか?仕組み・落とし穴・離婚時の処理までを整理2026.04.22

都心マンション価格の1億円超えが常態化するなかで、夫婦それぞれが別々に住宅ローンを組むペアローンを選ぶ世帯が増えています。

借入可能額を大きく伸ばせる一方で、金利上昇や収入減、離婚といった場面では、単独ローンにはないリスクがあります。

また、ペアローンと混同されやすい「収入合算(連帯保証型)」「連帯債務型」は仕組みが異なり、住宅ローン控除・団信・持分の扱いにも差があります。

同じ「夫婦で借りる」という言葉でも、どの形を選ぶかによって返済中の自由度や、離婚時の処理の難しさは大きく変わります。

この記事では、3つの夫婦ローンの違い、ペアローンのメリットが成立する前提と落とし穴、そして離婚時に取り得る実務上の選択肢までを整理し、制度を選ぶ前に確認したいポイントを解説します。

「ペアローン」「収入合算」「連帯債務」の違いを整理する

夫婦で住宅を購入するときのローンには、大きく分けてペアローン、収入合算(連帯保証型)、連帯債務型の3つがあります。

いずれも夫婦の収入を合わせて借入枠を広げる点は共通していますが、契約の本数、住宅ローン控除の適用、団体信用生命保険(団信)の保障範囲、離婚時の扱いまで仕組みが大きく異なります。

商品名だけで判断して契約してしまうと、想定していた節税効果や保障が得られなかったり、逆に思わぬ負担が残ったりすることがあります。

まずは3つの形の基本的な違いを整理します。

ペアローン——夫婦それぞれが別の主債務者になる

ペアローンは、夫婦それぞれが自分名義で住宅ローンを契約し、お互いが相手のローンの連帯保証人になる仕組みです。

ローン契約は2本に分かれるため、借入額・返済期間・金利タイプを夫婦で別々に設定でき、住宅ローン控除もそれぞれが自分の借入残高に応じて受けられます。

団信も契約ごとに加入するため、夫が亡くなれば夫のローンは完済されますが、妻のローンはそのまま残ります。

その反面、契約が2本あるということは、事務手数料や登記費用、印紙税といった諸費用も原則2本分発生します。 持分は、原則として出資割合(頭金と借入額の合計比率)に合わせて登記する必要があり、ここがずれると贈与税の対象となるため注意が必要です。

参照:国税庁|夫婦共有の住宅の持分割合

収入合算(連帯保証型)——主債務者は1人、配偶者は連帯保証人

収入合算のうち連帯保証型は、主債務者は夫婦のどちらか1人で、配偶者は連帯保証人として収入の一部が審査に合算される形です。

ローン契約は1本で、返済義務を負うのは主債務者のみになります。

団信に加入できるのも主債務者だけで、配偶者に万一のことがあってもローンは完済されません。 住宅ローン控除も主債務者のローン残高にしか適用されないため、節税という観点ではペアローンや連帯債務型に劣ります。

一方で、諸費用は1本分で済み、持分も原則として主債務者名義に集約しやすいため、契約関係はシンプルになります。 配偶者の収入を一部合算することで借入枠は広げられるものの、保障や控除の恩恵は限定的な設計です。

連帯債務型——借入は1本、夫婦がともに返済義務を負う

連帯債務型は、ローン契約は1本ですが、夫婦がともに主たる債務者(連帯債務者)として、借入額の全額について返済義務を負う仕組みです。

フラット35が代表例で、金融機関によっては夫婦連生団信のように、どちらかに万一のことがあった場合に残債が全額完済されるタイプを選べる商品もあります。

住宅ローン控除は、夫婦それぞれが負担割合に応じて適用を受けられるため、ペアローンと近い節税効果が得られます。 契約本数は1本なので諸費用はペアローンより抑えられますが、連帯債務型を取り扱う金融機関は限られており、選べる商品は多くありません。

持分は連帯債務の負担割合に応じて登記する必要があり、ここを誤ると贈与とみなされる点はペアローンと同様です。

参照:住宅金融支援機構|【フラット35】親子リレー返済・夫婦連生

ペアローンのメリットを成立させる「3つの前提」

ペアローンは、条件が揃えば借入枠・節税・保障のいずれでも有利になり得る制度ですが、前提が崩れるとメリットが薄れ、リスクだけが残ることもあります。

借入可能額を増やせる、住宅ローン控除を2人で受けられる、団信にそれぞれ加入できるといった利点は、一定の条件下ではじめて成り立ちます。

ここでは、ペアローンを選ぶ価値があると言える前提条件を3つに整理します。

2人の収入が長期的に安定していること

ペアローンの最大のメリットは、夫婦それぞれの収入を別々に審査に通せるため、合算よりも借入可能額を大きく伸ばせる点にあります。

これを活かして1億円超のマンションや都心の物件に手が届く一方で、借入額が大きくなるほど、収入減や退職時の影響も大きくなります。

共働き前提でギリギリの借入をすると、育休、時短勤務、転職、介護離職などで一方の収入が減ったときに、返済が一気に重くなります。

とくに変動金利型で借りている場合、今後の金利上昇と収入減が同時に起きると、家計への圧迫は二重になります。

ペアローンの借入枠を使い切るのではなく、片側の収入が減っても回る返済額に抑えておくことが、制度を安全に使うための前提になります。

住宅ローン控除の枠をそれぞれ使い切れる所得があること

ペアローンの税制上の強みは、住宅ローン控除を夫婦それぞれが自分の借入残高に応じて受けられる点です。

2022年以降の制度では、新築住宅の場合、省エネ基準適合住宅・ZEH水準省エネ住宅・長期優良住宅などの区分ごとに借入限度額が設定されており、控除率0.7%・控除期間13年で適用されます。

参照:国土交通省|住宅ローン減税

この控除は、あくまで支払っている所得税と住民税からの控除であり、所得が少ないと枠を使い切れません。

たとえば育休中で所得税がほぼ発生していない時期は、その年の控除は限定的になります。

片方の所得が低い、または将来数年にわたって低くなる見込みがある場合、ペアローンではなく連帯債務型や単独ローンのほうが、世帯全体での控除メリットが大きくなる場面もあります。

「2人で控除を受けられる」という言葉だけで判断せず、借入比率と所得見込みを踏まえて試算することが重要です。

団信の保障範囲を理解して選んでいること

ペアローンでは、夫婦それぞれが自分の契約分について団信に加入します。 夫が亡くなれば夫のローンは完済されますが、妻のローンはそのまま残る、という仕組みです。

連帯債務型で夫婦連生団信を選べる場合と比べると、どちらか一方に万一のことがあったときに、残された側に返済義務が残りやすい設計になっています。

これを補うために、生命保険や就業不能保険を組み合わせて設計する考え方もありますが、商品選定と保険料の検討が別途必要です。

また、がん団信や全疾病保障付き団信などを選ぶと金利が上乗せされるため、借入が2本になるペアローンでは保障コストも2倍になりやすい点は見落とされがちです。

団信をどこまで手厚くするか、生命保険でどう補うかを整理したうえで、保障と金利のバランスを決める必要があります。

ペアローンに潜む落とし穴

メリットが成立する前提を押さえていても、ペアローンには設計段階で見落とされやすいリスクがいくつかあります。

とくに、金利環境、登記と持分、離婚時の処理は、契約時にはあまり意識されないまま進みがちなポイントです。

ここでは、実際の相談現場で課題になりやすい3つの落とし穴を整理します。

金利上昇局面で総返済額が「2本同時に」膨らむ

日本銀行のマイナス金利政策解除以降、住宅ローン金利は段階的に上昇する局面に入っています。

変動金利型でペアローンを組んでいる場合、金利が上がれば夫婦2本分のローンが同時に影響を受けるため、返済額の増加幅は単独ローンより大きくなります。

変動金利には、返済額の見直しを5年ごとに行う「5年ルール」や、見直し時の上昇幅を直前の125%までとする「125%ルール」が採用されている商品もありますが、これは返済額の上昇を一時的に抑える仕組みであって、支払うべき利息が減るわけではありません。

ルールの対象外となる金融機関や商品もあるため、自分たちの契約がどの方式かは約款レベルで確認しておく必要があります。

固定期間選択型や全期間固定型に借り換える選択肢も含め、金利シナリオごとの返済額を定期的にシミュレーションしておくことが、ペアローン利用者にとってはより重要になります。

登記上の持分を誤ると贈与税の対象になる

ペアローンでは、夫婦それぞれが借入と返済を行うため、不動産の持分も原則として出資割合(頭金+借入額の比率)に合わせて登記する必要があります。

たとえば、夫の借入が7割、妻の借入が3割なのに、登記上の持分を50%ずつにしてしまうと、妻に20%相当の贈与があったとみなされ、贈与税の課税対象となる可能性があります。

さらに、後から繰上返済や借り換えで負担割合が変わった場合にも、持分を適切に見直さないと、時間差で贈与の問題が生じることがあります。

頭金を一方の親からの援助で賄うケースや、結婚前の預金を頭金に充てるケースでは、出資の出どころをどう整理するかで持分の考え方が変わります。

契約前に、借入比率・出資比率・登記持分の3つが整合しているかを税理士や司法書士に確認しておくことが、後のトラブルを避ける近道になります。

どちらか一方の「単独判断」で売却できない

ペアローンでは、夫婦がそれぞれ主債務者になり、同時にお互いのローンの連帯保証人にもなっています。

このため、片方が売却や借り換えを進めたいと思っても、もう一方の同意が得られなければ手続きを進めることができません。

不動産の持分も共有になっているため、売却にあたっては共有者全員の合意が必要です。 関係が良好なうちは問題になりにくいものの、意見が合わなくなった場面や、離婚を検討する段階で、この「単独では動けない」構造が大きな壁になります。

単独ローン・単独名義であれば売却判断はシンプルですが、ペアローン・共有名義では、売却・借り換え・賃貸化のいずれも2人の合意が前提になる点は、契約前に意識しておく必要があります。

離婚時にペアローンはどうなるか——実務上の3つの選択肢

ペアローンで最も相談が多いのが、離婚時の処理です。

結論から言えば、離婚したからといってローン契約が自動的に解消されることはなく、金融機関との契約関係は残り続けます。

どちらかが家に住み続けるのか、売却して清算するのか、それとも共有のまま持ち続けるのかによって、取るべき手続きと残るリスクは大きく変わります。

ここでは、実務上の3つの選択肢を整理します。

どちらかが住み続ける場合——借り換えで一方を債務から外す

一方が家に住み続け、もう一方が出ていく場合、理想的な形は、住み続ける側が単独で借り換えを行い、出ていく側のローンと連帯保証を解消することです。

借り換えによって住み続ける側が単独の主債務者となれば、出ていく側は債務からも保証からも外れます。

ただし、借り換えには住み続ける側の単独収入で新たなローン審査に通る必要があり、収入が十分でなければ実行できません。

この場合、実行できなければ旧ローンが残り、出ていく側も連帯保証人や共有名義人として法的な関係が続きます。

代替策として、親族に連帯保証を依頼する、親からの資金援助で借入額を圧縮する、といった方法が検討されることもありますが、いずれも実行可能性は個別事情に左右されます。

離婚協議書で「ローンはどちらが払う」と合意しても、その合意は夫婦間のものにすぎず、金融機関に対しては依然として双方が債務者・保証人として責任を負う点には注意が必要です。

売却して清算する場合——オーバーローンなら任意売却を検討

住宅を売却して清算する方法は、権利関係を一度リセットできるという意味で最も分かりやすい出口です。

売却代金で2本のローンを完済できる場合(アンダーローン)は、残った資金を財産分与で分け合う形に進みやすくなります。

一方、ローン残高が売却価格を上回る場合(オーバーローン)は、不足分を自己資金で補填するか、金融機関の同意を得たうえで任意売却の手続きに進むことになります。

任意売却は、金融機関との交渉を前提とする手続きで、競売よりも高い価格で売却できる可能性がある一方、信用情報への影響や、残債の扱いについて整理が必要です。

ペアローンの場合は、2本のローンそれぞれについて金融機関の同意を得る必要があり、調整が複雑になります。 売却のタイミング、価格、残債の負担割合、仲介手数料の分担などを事前に合意しておかないと、売却プロセスの途中で話が止まるケースもあります。

共有名義を維持する場合のリスク

当面売却せず、共有名義と2本のローンをそのまま維持するという選択もありますが、長期的にはリスクが大きい方法です。

まず、どちらかが返済を滞らせた場合、もう一方が連帯保証人として返済を求められる可能性があります。

また、将来売却したくなったときには、もう一方の同意が必要となり、連絡が取れなくなっていたり再婚によって状況が変わっていたりすると、手続きが難航します。 相続が発生した場合、持分が元配偶者の新しい家族に引き継がれる可能性もあり、権利関係はさらに複雑になります。

賃貸に出して家賃収入でローンを返す方法も選択肢としてはあり得ますが、これも双方の合意が前提となり、賃料収入と費用負担の分担について明確な取り決めが必要です。

共有維持は、問題を先送りにしているに過ぎないケースが多く、どこかの時点で借り換えか売却に踏み切る前提で考えたほうが安全です。

まとめ

ペアローンは、借入可能額を伸ばしつつ住宅ローン控除と団信の恩恵を夫婦それぞれが受けられる、制度としては使いでのある仕組みです。

ただし、そのメリットは、2人の収入が安定していること、それぞれが控除枠を使い切れる所得があること、団信の保障範囲を理解して選んでいること、という前提の上に成り立っています。

収入合算(連帯保証型)や連帯債務型との違いを踏まえず、名前だけで商品を選ぶと、想定していた節税や保障が得られないことがあります。

また、金利上昇局面では2本分の返済額が同時に増え、登記持分を誤れば贈与税の対象になり、離婚時には一方の単独判断で売却も借り換えもできないなど、単独ローンにはないリスクが顔を出します。

離婚時の選択肢は、借り換えで一方を債務から外す、売却して清算する、共有を維持する、のいずれかですが、共有維持は問題の先送りになりやすく、いずれかのタイミングで借り換えか売却を迫られるのが一般的です。

ペアローンを選ぶときは、借入枠の大きさだけで判断せず、10年後・20年後の収入変動、金利シナリオ、万一離婚や相続が発生したときの処理までを想定に入れて設計することが重要です。

制度の仕組みを正しく理解したうえで、他の夫婦ローンや単独ローンと比較し、自分たちの収入構成とリスク許容度に合う形を選ぶ姿勢が、ペアローンと長く付き合ううえでの土台になります。

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