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固定への借り換えが2倍に急増している|数字を見ると「明らかに損」なのに、なぜ増えているのか2026.08.12

「変動のままでいいのだろうか」——2026年6月に政策金利が1.0%に達して以降、この問いを抱えている方は多いはずです。

そして実際に、動いている人がいます。全期間固定金利の住宅ローンへの借換申込が、前年同期比で約2倍に増えているというデータが公表されました。

ただし、ここには一つ奇妙な点があります。現在の金利水準で変動から固定に借り換えると、毎月の返済額は大きく増えます。数字だけを見れば、明らかに不利な選択に見えるのです。

それでも借り換えを選ぶ人が倍増している。本記事ではまず、そのデータと「増える金額」を具体的に確認します。

目次

借換申込が前年同期比で約2倍に

何が起きているのか

SBIアルヒが公表した住宅ローンのトレンド分析によると、同社の全期間固定金利住宅ローン「フラット35」への借換申込データを分析したところ、26年4〜5月の申込件数は前年同期比で約2.0倍に増加しました。

内訳を見ると、動きの中心がどこにあるかがわかります。

借り換え前の金利タイプ前年同期比
固定金利期間選択型(5年・10年固定など)約2.8倍
変動金利型約1.8倍

固定期間選択型からの移行が最も伸びています。5年固定や10年固定の期間が終了し、その後の金利が跳ね上がる場面に直面した層が動いた、という構図です。

動いているのは「借入11〜15年目」の層

もう一つ、興味深いデータがあります。

住宅ローンの借入から11年以上15年以内の借換申込は前年同期比で約3.5倍、借入から10年以内の借換申込も約1.7倍に増えました。SBIアルヒは、5年や10年といった固定金利期間の終了時点や、変動金利型の5年ルールに基づく金利見直し時点など、金利上昇が家計に直結するタイミングを迎えた層の行動が多かったと推測しています。

参照:東急リバブル(前掲)

つまり、漠然とした不安で動いているのではありません。自分のローンの見直し時期が来た人が、その場で判断を迫られて動いているということです。

なお、返済期間がある程度短くなった層の約8割は、金利面でメリットがある借入期間20年以内の「フラット20」を選択する傾向がみられたとされています。

借り換えている層の年収は上がっている

さらに、借換層の平均年収は約850万円で、前年同期の約750万円より上昇しています。SBIアルヒは、資金力に比較的余裕のある層が、目先の低金利よりも将来も含めた計画的な家計管理を重視する傾向がみられたと分析しています。

参照:東急リバブル(前掲)

  • 余裕がないから借り換えているのではなく、余裕がある層が借り換えている。この点は後編で詳しく扱います。

では、いくら増えるのか?

現在の金利水準

判断の前に、いまの金利の位置関係を確認します。

2026年7月のフラット35の最も多い金利は3.140%で、2026年6月から0.07%下落しました。もっとも、長期的には急上昇しています。2026年1月のフラット35の最低金利は2.08%となり、2017年10月に現行制度になってから初めて2%を超え、2026年7月の最低金利は3.14%まで上昇しました。

一方、変動金利は多くの借り手で0.5〜0.7%前後の水準にあります。両者の差は、およそ2.5ポイントです。

シミュレーション

残債2,500万円・残りの返済期間25年・元利均等返済という条件で比較します。

金利タイプ適用金利毎月返済額総返済額
変動(現状)0.60%89,760円26,928,095円
変動(10月改定後の想定)0.85%92,530円27,759,075円
フラット353.14%120,381円36,114,375円

※編集部試算。諸費用は含みません

固定に借り換えると、毎月の返済額は約30,600円増えます。総返済額では約920万円の差です。

10月に変動金利が0.25%上がったとしても、月々の増加は2,770円にとどまります。固定への借り換えによる増加は、その11倍です。

数字だけを見れば、答えは出ている

念のため、もう一段踏み込んで計算してみます。

  • 総返済額でフラット35(3.14%)と並ぶ変動金利の水準は、3.14%です。借り換えにかかる諸費用を50万円と見込めば実質3.27%、80万円なら3.34%まで上がります。

つまり、変動金利が今後3.3%前後を超える状態が続かなければ、固定に借り換えたほうが総支払額は増えるということです。

現在の政策金利は1.0%です。変動金利が3.3%に達するには、政策金利がさらに3%近く上がる必要があります。日本総研は、日銀が半年ごとに0.25%ずつ引き上げ、2027年前半には1.5%程度に達すると見込んでいます。

この前提で試算すると、仮に変動金利が5年ごとに0.25%ずつ上がり続けたとしても、25年間の総返済額は約2,794万円です。フラット35に借り換えた場合の約3,611万円を、800万円以上下回ります。

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ここまでの計算を素直に読めば、結論は明快です。固定への借り換えは、損得の計算では割に合いません。

にもかかわらず、借換申込は2倍に増えています。しかも動いているのは、資金に余裕のない層ではなく、平均年収850万円という比較的余裕のある層です。

彼らが払っている月3万円は、何に対する対価なのでしょうか。

実は、この現象を理解する鍵は、借り換えの「目的」そのものが変わったという点にあります。かつて借り換えといえば返済額を減らすための手段でしたが、いまは違う理由で使われています。この転換を理解しないまま損得だけで判断すると、判断軸そのものを間違えます。

後編では、以下を解説します。

  • 借り換えの目的が「返済額の軽減」から何に変わったのか、データが示す答え
  • 月3万円の増額を「保険料」として見たときの妥当性の考え方
  • 借り換えが向く人・向かない人の具体的な条件
  • 残りの返済期間が短いほど固定化のコストは下がる。11〜15年目層が動く理由
  • 投資用ローンの借り換えは、住宅ローンとまったく事情が違う
  • 判断に迷ったときの4ステップ

参考・引用元


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