実家の空き家、売るなら期限は2027年末|相続空き家3,000万円特別控除の「二重の期限」を整理する2026.08.05
「お盆に帰省して、久しぶりに実家の中に入った」「誰も住んでいないけれど、まだ手をつけていない」——毎年この時期になると、実家の扱いを考えはじめる方が増えます。
そして多くの場合、その検討は「もう少し落ち着いてから」と先送りされます。急ぐ理由が見当たらないからです。
しかし、相続した実家の売却には、知らないうちに過ぎてしまう期限があります。相続した空き家を売ったときに譲渡所得から最高3,000万円を控除できる特例には、2027年12月31日という制度上の期限に加えて、相続した人ごとに異なるもう一つの期限が設定されているためです。
本記事では、この特例の効果を金額で確認したうえで、「二重になっている期限」の仕組みを整理します。
目次
なぜ、いま実家の話を確認すべきなのか
地価は5年連続で上昇し、下落した都市はゼロになった
国税庁が2026年7月1日に発表した2026年分の路線価によると、標準宅地の全国平均は前年比2.9%上昇と5年続けて高まり、伸び率は現在の算出方法に変えた2010年以降で最大になりました。最高路線価が前年実績を上回った都市の数は44と最多になった一方、下落した都市はゼロです。下落した都市が一つもないのは1991年度以来、35年ぶりのことでした。
参照:2026年7月の不動産ニュース|東急リバブル(提供/日刊不動産経済通信)
つまり、「価値がないと思っていた実家」の評価が、想定より上がっている可能性があります。売却益が出れば、そこには譲渡所得税がかかります。
制度の期限は2027年12月31日
一方で、その税負担を大きく圧縮できる特例には期限があります。
相続または遺贈により取得した被相続人居住用家屋またはその敷地等を、平成28年4月1日から令和9年(2027年)12月31日までの間に売却し、一定の要件に当てはまるときは、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで控除できます。これが「被相続人の居住用財産(空き家)に係る譲渡所得の特別控除の特例」です。
参照:No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例|国税庁
なお、この特例については業界団体から期限延長の要望が出されています。全国宅地建物取引業協会連合会は、相続空き家の譲渡所得に係る3,000万円特別控除の適用期限延長と要件緩和に取り組むとしています。
参照:東急リバブル(前掲)
ただし、後述するとおり延長されても救われない人がいます。ここが今回の記事で最も重要な点です。
特例の効果を金額で確認する
制度の説明に入る前に、この特例を使えるか使えないかで手取りがどれだけ変わるのかを見ておきます。

試算の前提
- 昭和50年築の木造戸建て(実家)を相続
- 建物を解体し、更地として3,000万円で売却
- 購入時の契約書が残っていないため、取得費は概算取得費(売却代金の5%)を適用
- 被相続人の取得日を引き継ぐため、長期譲渡所得(税率20.315%)に該当
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 売却代金 | 30,000,000円 |
| 取得費(概算・5%) | 1,500,000円 |
| 譲渡費用(仲介手数料・印紙税・解体費) | 3,066,000円 |
| 譲渡所得 | 25,434,000円 |
※編集部試算
特例の有無で税額はこう変わる
| ケース | 課税譲渡所得 | 税額 |
|---|---|---|
| 特例を使わない | 25,434,000円 | 5,166,917円 |
| 特例あり(控除3,000万円) | 0円 | 0円 |
※編集部試算。長期譲渡所得の税率20.315%(所得税15.315%+住民税5%)で計算
その差は約517万円です。
手続きの手間を惜しんだ結果、あるいは要件を一つ外してしまった結果として、この金額がそのまま税負担になります。譲渡所得税の基本的な計算方法については、こちらの記事もあわせてご覧ください。
▶「不動産売却にかかる4つの税金を解説!譲渡所得税の計算方法も紹介」
期限は「二重」になっている
ここからが本題です。この特例の期限は、実は2つあります。

期限その1:制度そのものの期限
1つ目は、先ほど触れた2027年12月31日という制度の適用期限です。これは全員に共通します。
期限その2:相続した人ごとの期限
2つ目は、相続の開始があった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までという要件です。
参照:国税庁(前掲)
こちらは相続がいつ発生したかによって、人それぞれ異なります。そして適用を受けられるのは、この2つの期限のうち早いほうまでです。
相続発生年ごとのタイムリミット
具体的に整理すると、次のようになります。
| 相続が発生した年 | 3年ルールによる期限 | 制度期限 | 実際のタイムリミット |
|---|---|---|---|
| 2022年 | 2025年12月31日 | 2027年12月31日 | 2025年12月31日(経過済み) |
| 2023年 | 2026年12月31日 | 2027年12月31日 | 2026年12月31日 |
| 2024年 | 2027年12月31日 | 2027年12月31日 | 2027年12月31日 |
| 2025年 | 2028年12月31日 | 2027年12月31日 | 2027年12月31日 |
| 2026年 | 2029年12月31日 | 2027年12月31日 | 2027年12月31日 |
※編集部作成
注目していただきたいのは2023年に相続が発生したケースです。この場合の期限は2026年12月31日、つまり残り約5か月しかありません。
そして重要なのは、仮に制度の適用期限が2027年末から延長されたとしても、3年ルールのほうは延長されないという点です。2023年に相続した方にとって、制度延長は救済になりません。
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ここまでは「いくら得をするのか」「いつまでなのか」を整理しました。
しかし、この特例で本当に多いつまずきは、期限切れではありません。期限内に売却したのに、要件を一つ外していたために適用できなかったというケースです。
なかでも最も多いのが、相続後に「空き家のままにしておくのはもったいない」「誰も住まないなら貸そう」と判断してしまうパターンです。この判断をした時点で、3,000万円の控除は使えなくなります。善意の、しかも合理的に見える行動が、結果として500万円規模の税負担を生みます。
さらに、控除額は必ずしも3,000万円とは限りません。相続人の人数によっては2,000万円に減額されます。

後編では、以下を解説します。
- 「とりあえず貸す」で控除が消える理由と、対象になる行為の範囲
- 適用を受けるための6つの要件チェックリスト
- 建物は耐震改修すべきか、取り壊すべきか(2024年からルールが変わりました)
- 相続人が3人以上だと控除額が2,000万円になる。試算で比較
- 他の特例とは併用できない。どちらを選ぶべきか
- 逆算スケジュールと、市区町村で取得する必要書類
参考・引用元
- 国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」 https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/joto/3306.htm
- 国土交通省「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」 https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk2_000030.html
- 東急リバブル「2026年7月の不動産ニュース」(2026年路線価/提供:日刊不動産経済通信) https://www.livable.co.jp/solution/news/f_news/
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